UKの人気メタルバンドBring Me The Horizonによる7作目のフルアルバム。アルバム毎に作風を変化させつつ興味深い作品を発表し続ける彼らだが、今回の新譜はひときわ高い完成度を誇っている。

今作の全体的な音楽性をざっくりと纏めるなら、90年代後半~2000年代にかけての若者向け音楽――エモ、ポストハードコア、スクリーモ、ニューメタル、オルタナティブメタル、メタルコア近辺の音楽――を総括し、その上でエレクトロやハイパーポップ風の近未来的な装飾を加えた内容と言い表せるだろう。ギターリフよりも歌が主軸に据えられた楽曲の構造や、スクリームやブレイクダウンの登場頻度の少なさ故、メタル系よりもエモやポストハードコア系の要素が前面に出ている印象。また、全体的に歌メロは非常にキャッチーかつ強力で、オリバー・サイクスの歌唱力も相まって初期Linkin Parkに匹敵する問答無用の説得力を感じる。その一方で、近作で見られたどこか神聖さを感じるアトモスフィアが減退しているのは個人的には残念な点だ。(なお、今作の製作中にキーボード奏者のジョーダン・フィッシュが脱退しているが、あくまで制作途中での脱退のため直接的な要因かは定かではない。)

楽曲毎に見ていくと、実質的なオープニング曲「YOUtopia」がまず素晴らしい。オリバーの表現力豊かな歌い回しには“エモい”という画一的な言い回しでは捉え切れない切実さがあり、このアルバムのトーンを決定づける名曲だ。「Top 10 staTues tHat CriEd bloOd」も日本のポスト・ハードコアバンドFACTを髣髴とさせるキラーチューン(※1)。その他にも、Underoathをゲストに迎えたスクリーモ曲「a bulleT w- my namE On」やポップパンクにハイパーポップやメタルコア的ブレイクダウンを融合させた「LosT」など秀逸な楽曲が揃っている。

また、今作はアルバム全体の構成も秀逸。曲間のSEやインタールードも考え尽くされており、オープニングからラストまでの流れるような展開美はこの手のジャンルのアルバムとしては異例なほど秀逸。アルバム全体で支配的な電子音やエフェクトの装飾の多さも統一感の付与に貢献しているように思う。

自分はエモやポストハードコアといったジャンルに対して個人的な深い思い入れは無いが、今作には強く惹かれるものがあり繰り返し聴いている。こうした“ラウド”な音楽を聴いていた世代には懐かしさがあるのはもちろん、初めて触れる層を問答無用で沼に引きずり込むほどのクオリティの高さがある。今まで彼らに全く興味が無かった人であっても聴くべき優れたアルバムだ。

Rating:84/100



※1 今作では日本のメタルバンドPaleduskのギタリストDAIDAIが「Top 10 staTues tHat CriEd bloOd」含む8曲の作曲に関与している。彼がオリバーにFACTを紹介した件については下記動画参照。https://www.youtube.com/watch?v=IezxjFwkRZM