2025年の年間ベストアルバムです。選ぶにあたっての基準はあくまで“鳴っている音が自分好みかどうか”です。“時代を反映しているか”とか“音楽メディアの評価”みたいなことは一切配慮していません。一年単位のトレンドに安易に左右されない普遍的な魅力こそが音楽という芸術の美点の大半を占める部分だと思いますし、いくら他人が絶賛していようと好きになれない音楽があるのは普通のことなので。

今年は例年に増して新譜を聴かなかった年でした。Black Country, New RoadやBig Thiefのアルバムは自分の好みから外れた作風だったり、海外のメインストリームの音楽の流行にはついていけず。そして、自分が最も好きなロックバンドStreetlight Manifesto(こちらの記事を参照)の12年振りとなるはずだった新譜は、延期したのち結局リリースされずじまい……。

そんなわけで、今年は過去のお気に入りのアルバムを聴き返すことが多い年でした。次々とリリースされる新譜にエキサイトしている皆様のことが羨ましい気持ちを少しだけ抱えつつ、とはいえ無理して聴く音楽ほどつまらないものは無いので、普段通りマイペースに音楽を聴いていました。

こんな立場で恐縮ですが、せっかくなので今年新譜で良かったアルバムを10枚選びました。短評はあったり無かったり。自分らしいラインナップにはなったかなと思いますので、軽い気持ちで読んでいただければ幸いです(;^_^A


10.SEEDA『親子星』


9.McKinley Dixon『Magic, Alive!』


8.Deftones『private music』


7.Jonny Nash『Once Was Ours Forever』


6.Thornhill『BODIES』
Deftonesフォロワーの代表格と言われているバンドで、起伏に富んだ曲展開や細かくアクセント移動するリフの面白さは本家に勝るとも劣りません。アクの強さもあるDeftonesの音楽を良い意味で薄味にしたような印象も受け、Meshuggahに対するPeripheryのような存在だと思えて好感が持てます。近年の若手メタルバンドの中では随一の実力派だと思います。


5.藤井風『Prema』
現代の日本トップクラスのミュージシャンによる3作目は、全編英語詞かつ往年のR&Bへの憧憬が色濃く滲み出た作風に。個性的なキラーチューンが連発された前作ほどハマれなかったというのが正直な感想で、本編未収録の「grace」や「真っ白」といった名曲を収録した日本語アルバムを作って欲しかった思いはあるのですが、それでも他の追随を許さぬ作曲能力には唸らされました。とりわけ「Love Like This」は今年トップクラスの素晴らしい名曲。今後が楽しみなアーティストです。


4.森山直太朗『Yeeeehaaaaw』
オフィシャルサイトでの「身体的な解放とともに祝祭的なブルーグラスサウンド溢れる外向的なアルバム」という説明通りの、非日常感や前向きでポジティブなムードが目立つ一方で、その真裏に張り付いたような一抹の寂しさには感銘を受けました。それは彼の表情の描き分けが絶妙な歌い回しや、死生観を反映した歌詞に依るところも大きいと思います。

また、自分が本場アメリカのブルーグラスやカントリーよりも今作に惹かれている要因は日本のフォークや歌謡曲的な味わいがあるからなんだろうな、と自分の趣味嗜好について考えさせられるきっかけにもなりました。彼の音楽を真剣に聴いたのは今回が初めてだったものの、同時リリースの『弓弦葉』や過去作と併せて聴き込んでいきたいですね。


3.Hayden Pedigo『I'll Be Waving As You Drive Away』
Hayden PedigoはJohn Fahyを開祖とするアメリカン・プリミティヴ・ギターの系譜に位置付けられるギタリストである一方、アンビエント・アメリカーナにジャンル分けされることもあります。とはいえ、North AmericansやAndrew Tuttleといった同ジャンルに属するアーティストと比較してより明晰なメロディや曲構成が特徴的。また、美しい旋律が奏でられる楽曲には癒し一辺倒ではなく憂いや緊張感を感じさせる場面もあったりと、多彩な表情を見せてくれます。

コンパクトにまとまったアルバムの構成や、豊潤な鳴りの音響(前作と聴き比べるとその進化が分かりやすい)も含め完成度が非常に高く、末永く聴き続けることになると思います。


2.All That Remains『AntiFragile』
アメリカのメタルコアバンドによる10作目。自分が彼らのアルバムを真剣に聴くのは4th『Overcome』以来なのですが、これはかなりの快作と言って良いのでは。各楽器のリフやリズム構成の緻密さは過去作とは段違いですし、それでいてメタルコア特有の爽快感・高揚感に満ち溢れている。終盤の楽曲がパッとしないというメタルのアルバムにありがちなウィークポイントはあるものの、それを差し引いても非常に優れた作品です。


1.Bon Iver『SABLE, fABLE』
稀代の音楽家Justin Vernon率いるインディ・フォークバンドの5作目。自分にとってBon Iverの音楽は、親密さがありつつもどこか人間離れした荘厳さを感じてしまい、良くも悪くも“心を揺さぶり過ぎる”ために軽い気持ちで向き合えないところがありました(ANOHNI & The Johnsonsも同じような印象を受けます)。が、今作ではR&Bやソフトロックの要素を強く押し出したことによって、従来とは別種の温かみが生まれています。その為、過去作とは違った距離感で接することが出来るアルバムのように自分には感じられました。

電子音のテクスチャーが入り乱れる音作りにはまだ慣れないところがあるものの、圧倒的強度の作編曲と特異な音響が織りなす異物感との調和こそが彼らの最大の武器だと改めて思いました。曲順の並びも良く、彼らのディスコグラフィの中では『Bon Iver, Bon Iver』と『i, i』に次ぐ傑作でしょう。音楽が好きで良かったなとしみじみと感じさせてくれるアルバム。