とある音楽好きのエッセイというか独り言のような内容です。気楽に読んでくださると幸いです。

僕は今までの人生で、性格な数字は数えていないものの、結構な数の音楽のアルバムに触れてきたと思います。音楽鑑賞に本格的にハマった中学一年生の頃から、メディアの「歴史的名盤〇〇選」や「年間ベストアルバム」に載ってるような作品は、全てではないが網羅的にどんどん聴きました。それ以外にも音楽好きの個人のブログでお勧めされているようなアルバムなど、知名度が低くとも興味が湧けばどんどん聴きました。高校生になってからはそうした過去の名作を聴くのと並行して、お気に入りのアーティストの新譜や話題作もどんどん聴きました。

もちろん、世の中には僕以上の音楽マニアは山ほど居るので、アルバムを大量に聴いたこと自体は別に自慢でも何でもないです。そもそも好きで音楽を聴いてただけだし。とはいえ、自分なりに色んなアルバムを聴き、そして自分の肌に合うアルバムにたくさん出会えたことは、我ながら有意義な経験だったと思います。

しかし、そうした音楽鑑賞ライフを送って10年以上経ち、最近ある懸念点が頭をもたげて来た気がします。それは、「新譜を聴く時間と、愛聴盤を聴き返す時間がせめぎ合っている」ということです。なお「愛聴盤」は「愛読書」と異なり辞書には載ってはいない言葉ですが、それなりの市民権を得ているようなのでここで使わせてもらいます。要するに「何度も繰り返し聴くお気に入りのアルバム」のことです。

長年音楽を聴き続けていると、好みの変化によって聴かなくなったアルバムも出てくるとはいえ、愛聴盤の数は基本的に増えていきます。そうなってくると、愛聴盤を聴き返す際に必要になる時間もどんどん増える一方です。自分がまだ存在すら知らない未知の作品は山ほどあるし、これから世に出続けるのに。……何が言いたいのかというと、要するに「時間がない」ということに尽きます。

音楽は時間芸術である以上、鑑賞するのには時間が必要です。60分のアルバムを聴くには60分必要。タイパ(タイムパフォーマンス)だなんだと言ってドラマや映画を倍速でせかせかと鑑賞する人が居る昨今とはいえ、まさか音楽を倍速再生して満足してる音楽好きはさすがに居ないでしょう(……居ないよね?)。限られた時間で有意義に音楽に触れる為には、「何をどのくらい聴くか」について考えたほうが良いなと思った次第です。X(旧Twitter)でも「魅力的な新譜が多すぎて一枚一枚をじっくり聴く時間が減ってきている」といった旨の悩み(というか嬉しい悲鳴?)をつぶやいている方もいらっしゃいますし、こういう悩みは音楽に限らずいろんなジャンルのマニアのあるあるかもしれませんね。

で、僕の場合はどうだろうかとしばらく考えた結果、「今後は新譜を聴くのはそこそこにして、愛聴盤を聴く時間を増やしていこう」、という結論に至りました。僕は新譜を聴いて新鮮味を味わうのはもちろん好きだけど、愛聴盤を繰り返し聴いてその深みを感じるほうががより好き。そして、(あくまで自分個人の感覚だと強調しておきますが)後者のほうが録音芸術としての音楽の味わい方として“よいこと”だし、“音楽という芸術を深く味わえる”と考えています。

なので、最近僕は「新譜を聴き過ぎないようにしよう」ということを心掛けてます。自分のライブラリには十分な数の愛聴盤がありますし、新譜を聴き過ぎるとそれらを聴き返す時間が取れませんので。安価で大量の未知の音楽に出会えるサブスク全盛の今だからこそ、新たに聴くアルバムの数を意識してセーブするのは、自分に必要な心構えなのかなと。週に何枚しか新譜を聴かない、みたいにルールを定めるのは窮屈過ぎてバカらしいのでさすがにしませんけど。そもそも僕は世の一般的な音楽マニア層よりは「話題の新譜」や「音楽シーンの動向」への関心は低いほうです。無理して新譜を聴くのを我慢している訳では無いし、このスタンスが自分には向いている気がします。

それに、さすがに高校生の頃のように様々なジャンルを開拓して、かつ聴くアルバム全てが新鮮だった時期は過ぎてしまった自覚はあります。少しさびしいけど。良くも悪くも自分の音楽の趣味範囲はある程度定まってきたし、既知の音楽をじっくり聴くのも大事だろうなと考えてます。……こうやって人はアンテナが鈍っていき、やがて流行りの音楽を認めないおじさんと化すのだろうかと思うと、なんだか暗澹たる気持ちにならなくもないですが。とはいえ、「新譜を聴き過ぎないようにしよう」なんて方針を立てても自分の好きなアーティストの新譜や「今年を代表する傑作」なんて評された新譜が出ればついつい聴いてしまうし、最新の音楽への興味が全く失せたという訳ではないので、年間ベストアルバム的な記事を書けるくらいには新譜を聴いていこうと思います。

なんかグダグダとした文章になってしまったので今回はこの辺りで。ただ、ある程度の音楽好きは「音楽を聴く時間が足りない」なんてことは考えたことがあるはずですし、「新譜と愛聴盤を聴くバランス」について触れられている文章が、あくまで僕の観測範囲内ではネット上に見当たらなかったので、自分なりに文をしたためた次第です。他の人はこのバランスをどうしてるんだろう……。

別に深く悩んでるとかでは無いのですが、文章にしてみると妙に暗い雰囲気になってしまったかもしれませんねσ^_^; このまま終わるのも味気ないので、最後にお気に入りの曲をひとつ。この記事を書いている時点で僕はKIRINJIにドハマりしている最中で、アルバムをいくつも聴いてます。多くの名曲があるKIRINJIの楽曲の中でも特に秀逸な名曲。非常にお勧めです。