サイケデリックな音楽性の日本のバンドによる5thフルアルバム。彼らのアルバムを聴くのは初めてだったのだが、とても興味深く聴くことが出来た。今作を聴いて自分が真っ先に連想したのは、 Tame Impala, MGMT, Yeasayer, Gang Gang Danceといった2000年代以降に活躍したシンセサイザー主体のネオサイケデリア/サイケデリックポップの実力派達。また、彼らの過去のインタビューを読むとUnknown Mortal OrchestraやFoxygenといったグループも参照元としてあるようで、いわゆるサイケデリックと形容される音楽からの影響が強いようだ。(なお列挙したのはオーストラリアのTame Impalaを除きいずれもUSのバンド。)

Tempalayの音楽には風変わりな音色を用いたサイケデリックな装飾を施されているが、根っこの部分にはR&Bやディスコ系統の秀逸な歌メロがあり、ポップな歌ものとしての強度の高さには唸らされるものがあった。先ほど並べたグループ達の中でも起伏に富んだ歌メロのフックを重視している(サイケな雰囲気重視で輪郭がぼやけたものになっていない)という点ではYeasayerと共通する美学があるのでは…と感じたりもする。

また、彼らの音楽を実際に聴く前は 「あびばのんのん」や「月見うどん」などの曲名などの雰囲気からなんとなくコミックバンド的なおちゃらけたユーモアを売りにしたのかと思っていたが、実際には“肩の力が抜けているが全くダラけてはいない”ようなけっこうシリアスな世界観のバンドなんだなと感じた。

こうしたサイケデリックなポップは自分の好みドンピシャではない(嫌いではない)ので19曲72分という大ボリュームはさすがにダレを感じてしまったが、今後の聴き込み次第ではさらに点数は上がると思う。壮大さと親しみやすさのバランスも丁度良く、このバンド特有の温度感に波長が合う人にはたまらないアルバムだろう。USインディ好きや一風変わった音楽が好きな人にお勧めしたい秀作。

Rating:70/100